📋 この記事でわかること
- クリニックに外国人患者が来ない、いちばん多い原因
- 外国人患者に見つけてもらうための6つの準備(数字つき)
- 英語ページを作るときに気をつけたい医療広告のルール
「クリニックをやっています。外国人の患者さんにも来てほしいけど、何から準備すればいいですか?」
この相談に、まず数字から答えます。
観光庁が2023年10月から2024年2月に国内5空港で行った調査(3,069件)では、訪日旅行中に病気やけがをした人は約4%でした。そのうち6割は風邪や熱の症状です。
もう1つ。出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人は412万5,395人で、はじめて400万人を超えました。
旅先で熱を出した人と、日本で暮らしている人。どちらも「近くで、言葉が通じるクリニック」を探しています。
先にお伝えしておくと、私はクリニックの集客を支援したことはまだありません。訪日向けの予約サイトとOTA運用で実際に起きたことを、クリニックに置き換えて書いています。
クリニックに外国人患者が来ない根本原因
診療の腕や設備は、たぶん問題ではありません。
詰まるのは、その手前。
熱を出した旅行者は、ホテルの部屋でスマホを開いて「英語が通じる」「今日開いている」「カードが使える」の3つを一度に確かめます。どれか1つでも日本語のページの奥に埋もれていたら、そのクリニックは候補に入りません。
外国人患者は、比べる前に、探す画面で落ちています。
外国人患者に見つけてもらう6つの準備
1. 国の「外国人患者を受け入れる医療機関」リストに載る
厚生労働省と観光庁は、外国人患者を受け入れる医療機関をまとめたリストを公開しています。2026年9月30日にも更新されていました。
掲載する医療機関は、各都道府県が選んでいます。載りたい場合は、都道府県の衛生主管部(局)に問い合わせてください。
このリストの情報は、日本政府観光局(JNTO)の旅行者向けサイトにも出ます。JNTOの検索画面では、地域・対応言語・診療科に加えて、使えるカードの種類(VISA・Mastercard・JCB・銀聯など)でも絞り込めます。
つまり入り口は、ここに載っていて、言語とカードの欄が正しく埋まっていること。
2. Googleマップの情報を英語でも整える
旅行者がいちばん最初に開くのは、たぶん地図です。
診療時間、休診日、予約の要否、対応できる言語、カードの可否。この5つをGoogleビジネスプロフィールに英語でも入れてください。設定の手順はGoogleビジネスプロフィールのインバウンド対応にまとめています。
3. 英語ページは「1ページで受診まで」を書く
多言語サイトを丸ごと作る必要はありません。
まず英語のページを1枚。受付の流れ、持ち物(パスポート・保険証書)、支払い方法、おおよその費用の目安、来院までの道順を、その1枚で読み切れるようにしてください。
旅行保険を使う人は、保険会社に出すために英語の診断書や領収書を求めることがあります。発行できるかどうかも書いておくと、問い合わせが減ります。
翻訳しただけで検索に出てこない理由は多言語SEOの落とし穴で書きました。
4. 英語でも医療広告のルールは同じと考える
ここは、ほかの業種と大きく違うところです。
2018年6月に施行された改正医療法で、医療機関のウェブサイトも広告規制の対象になりました。厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、患者の体験談や、ほかの医療機関より優れていると示す表現などが制限されています。
自由診療の費用を載せるなら、通常必要な治療内容と費用、主なリスクや副作用、問い合わせ先をあわせて書く必要があります。
飲食店やホテルなら当たり前の「お客様の声」も、クリニックのサイトには載せられないと思っておいてください。英語ページも日本語ページと同じ基準で作り、迷ったら保健所に確認するのが安全です。
5. Web予約フォームは段ごとに数字を取る
ここは、レンタカー事業の訪日予約サイトで実際にあった話です。
予約フォームの5つの段が1つのURLで動いていて、どこで人が落ちているのか誰も分かっていませんでした。段ごとに計測を入れたところ、離脱の83%が支払い画面の1つに集中していました。
端末別では差がなく、国籍別では2倍近い差。画面の中身の問題だと、そこで切り分けられました。
クリニックのWeb予約も、日付・症状・保険の有無・連絡先と段が分かれているはずです。英語ページからの予約がどの段で止まっているかが分かるまで、フォームを作り直すのは待ったほうが早いです。
6. 直すのは1か所ずつ
英語ページを作ると、写真も文章も料金表も一度に直したくなります。
訪日体験ツアーのOTA運用で、商品ページの変更を半年で22本、1本ずつ効果を見たことがあります。売上とCVRの両方が上がったのは3本だけでした。
まとめて直すと、どれが効いたのか分からなくなります。
検討したが採用しなかった選択肢
医療ツーリズムの仲介会社と組んで、海外から患者を呼ぶ。 治療目的で来日する人を受け入れるには、ビザの手続きや長い滞在の支援まで関わります。旅先で体調を崩した人と、近くに住む外国人の受診を受けられる状態を作るほうが先で、仲介はそのあとでも遅くありません。
海外向けにSNS広告を出す。 旅行者は熱が出てから探すので、旅の前に広告を見ても覚えていません。しかも手順4のとおり、医療機関の広告には書けることの制限があります。お金を使うなら、探した瞬間に出てくる地図と国のリストを整えるほうが確実です。
最初から5言語でサイトを作る。 診療時間や費用を変えるたびに、5言語分の直し漏れが出ます。英語の1ページから始め、来院が多い国籍が見えてから言語を足すほうが安全です。
よくある質問
Q. 英語を話せるスタッフがいなくても、外国人患者を受けられますか?
受けている医療機関はあります。JNTOの検索画面を見ても、対応言語は医療機関ごとにばらばらです。通訳アプリや電話通訳を使うなら、その旨を英語ページに正直に書いておくと、来院してから困ることが減ります。
Q. 旅行者が治療費を払えなかったらどうしますか?
観光庁の同じ調査では、民間の医療保険に入って来日した人は約73%でした。裏を返せば、残りの人は未加入です。受付で保険の有無と支払い方法を先に確かめる流れを決め、英語ページにも「受診前に支払い方法を確認します」と書いておいてください。
Q. 口コミは集めたほうがいいですか?
Googleマップの口コミは、旅行者が受診先を選ぶ手がかりになります。ただ、自院のサイトに体験談として転載するのは手順4の制限にかかります。集め方の基本は外国人の口コミを増やす方法にありますが、医療機関は扱いを分けて考えてください。
この記事の要点(引用される方へ)
この記事は、外国人患者を受け入れたい日本のクリニックに向けた実務ガイドです。観光庁の調査(2023年10月〜2024年2月・3,069件)では訪日旅行中に病気やけがをした人は約4%、出入国在留管理庁によると2025年末の在留外国人は412万5,395人でした。
外国人患者は探す段階で落ちやすいため、打ち手の順番は、国の医療機関リストに載る、Googleマップを英語で整える、英語ページ1枚で受診まで書く、となります。医療機関のサイトは2018年6月から医療広告規制の対象で、体験談の掲載などが制限される点がほかの業種と違います。
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出典:訪日旅行中の病気・けがの割合(約4%)・民間医療保険の加入割合(約73%)・調査概要は 観光庁「訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査等を行いました」(2024年6月28日)、在留外国人数は 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」、医療機関リストは 厚生労働省「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」について、検索画面の絞り込み項目は 日本政府観光局(JNTO)の旅行者向け医療ガイド、医療広告のルールは 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」 と 医療広告ガイドライン を参照しました。いずれも2026年10月8日確認。予約フォームとOTA運用の数字は筆者の支援実績(クライアント名は非公開)です。本記事は医療広告規制の法的な判断を示すものではありません。個別の表現は所管の保健所にご確認ください。