「英語版と中国語版を作ったのに、海外からのオーガニック流入がほとんど増えない」
グローバル展開を支援するなかで、この相談を最も多く受ける。原因を調べると、判で押したように同じ構造が見える——翻訳はしているが、多言語SEOの設計ができていない。
翻訳とSEOは別の作業だ。翻訳したページをそのままアップロードしても、Googleはどの言語版をどの国のユーザーに届ければいいか判断できない。その結果、日本語ページがアメリカの検索結果に出たり、英語ページが日本語検索に混入したりする。
この記事では、多言語SEOの失敗パターンと、正しく機能させるための3ステップを実務の視点で解説する。
なぜ「翻訳しただけ」では機能しないのか
多言語SEOには3つの柱がある。
| 柱 | 内容 |
|---|---|
| ① URL構造 | 言語版ごとに独立したURLを持たせる |
| ② hreflang設定 | 各言語版の対応関係を検索エンジンに伝える |
| ③ 言語別キーワードリサーチ | 現地の検索ワードに合わせたコンテンツを作る |
この3つが揃って初めて機能する。よくある失敗は「翻訳してURLを変えずに公開する」か「hreflangを設定したが片方向にしか書いていない」か「日本語キーワードを直訳して英語にした」のいずれかだ。
私が支援した越境EC事業者では、英語版ページを /page.html?lang=en というパラメータ方式で公開していた。Googleはパラメータ付きURLを言語版として認識しにくいため、英語ページはほぼインデックスされていなかった。URL構造を見直すだけで、3ヶ月後には英語圏からの流入が2.7倍になった。
Step 1: URL構造を設計する
まず言語版ごとに明確なURLを与える。選択肢は3つある。
ccTLD(国別ドメイン)
- 例:
example.jp(日本)、example.co.uk(英国) - メリット: 地域ターゲティングの信号が最も強い
- デメリット: 複数ドメインの管理コストが高く、ドメイン評価が分散する
- 向いているケース: 現地法人があり、国ごとに独立した施策を展開する場合
サブディレクトリ(推奨)
- 例:
example.com/en/、example.com/zh/ - メリット: ドメイン評価を一本化でき、管理が比較的容易
- デメリット: サーバー設定でジオターゲティングを補完する必要がある
- 向いているケース: 多くのグローバルサイト。長期拡張を見据えるなら最も汎用的
サブドメイン
- 例:
en.example.com、zh.example.com - メリット: 言語版ごとに異なるCMSや設定を使いやすい
- デメリット: Googleはサブドメインを別サイト扱いすることがあり、評価が分散しやすい
実務的な推奨: 特別な理由がなければサブディレクトリ型を選ぶ。一度決めた構造の変更はSEOへの影響が大きく、数ヶ月のリカバリー期間を要するため、初期設計が重要だ。
Step 2: hreflangを正しく設定する
hreflangは「このページの日本語版はここ、英語版はここ」と検索エンジンに伝えるタグだ。設定ミスが多い箇所なので、必須ルールを整理する。
hreflangの4原則
- 双方向に設定する — 日本語ページに英語版へのhreflangを書いたら、英語版にも日本語版へのhreflangを書く。片方向だけでは無効になる
- 自己参照を含める — 各ページは自分自身へのhreflangも必要
- 正しい言語コードを使う — ISO 639-1(言語)× ISO 3166-1(国)の組み合わせ。
en-US(アメリカ英語)、en-GB(イギリス英語)、zh-CN(中国本土)など。アンダースコア(en_US)は無効 - x-defaultを設定する — どの言語にも該当しないユーザー向けのデフォルトページを指定する
<!-- 日本語ページのheadに記述する例 -->
<link rel="alternate" hreflang="ja" href="https://example.com/ja/page/" />
<link rel="alternate" hreflang="en" href="https://example.com/en/page/" />
<link rel="alternate" hreflang="x-default" href="https://example.com/en/page/" />
よくある失敗パターン
| 失敗 | 影響 | 対処 |
|---|---|---|
| 双方向リンクの片方が抜けている | Googleが両ページを無視する | 全言語版で相互参照を確認 |
| 相対URLを使っている | hreflangが無効 | 必ず絶対URL(https://〜)で記述 |
| canonical tagと矛盾している | 重複コンテンツ扱いになる | canonical URLとhreflangの整合性を確認 |
ページ数が多い場合は、HTMLのheadに個別記述するよりXMLサイトマップ内でhreflangを管理する方が保守しやすい。Google Search Consoleの「国際ターゲティング」レポートで定期的にエラーを確認する習慣も重要だ。
Step 3: 言語別にキーワードリサーチをする
最も見落とされやすいステップがこれだ。日本語のキーワードを翻訳しただけでは、現地の検索意図に合わない。
私が実際に見たケース:日本語で「体験ツアー 東京」をターゲットにしていた事業者が、英語版のキーワードを「experience tour Tokyo」に直訳していた。しかし訪日外国人が実際に検索しているのは「things to do in Tokyo」「Tokyo guided tour」「day trips from Tokyo」といった表現だ。
言語別キーワードリサーチで確認すべきポイント:
- 現地で使われる語彙 — 英語でも英米で表現が異なる(ズボン: Pants/Trousers等)
- 検索ボリュームの差 — 日本語で検索量が多いキーワードが、英語では競合過多なケースがある
- 検索意図の違い — 同じ概念でも現地ユーザーが求める情報の粒度が異なる
ツールはGoogleキーワードプランナー(対象国・言語を切り替えて確認)が最も手軽だ。Ahrefsを使える環境であれば、競合サイトの流入キーワードを現地語で確認するのが効率的だ。
3つを「同時に設計する」ことが成功の鍵
多言語SEOで失敗するパターンの共通点は、URL構造・hreflang・キーワードを「後から追加」していくことだ。
- URL構造を決めずに翻訳→後からhreflangを追加→構造が複雑になって管理できなくなる
- hreflangを設定したが、キーワードが現地語に最適化されていないのでランクしない
この3つは一気通貫で設計する必要がある。公開後に構造を変えるほど修正コストは膨らむ。
私が支援するプロジェクトでは、多言語展開の初動でまずURL設計とhreflang実装の設計図を作り、その上で言語別キーワードの優先順位を決める順序で進める。この流れで進めた事業者は、6ヶ月以内に対象言語からのオーガニック流入が平均2〜3倍になっている。
まとめ:翻訳の前にやるべきこと
| ステップ | チェック項目 |
|---|---|
| URL構造 | サブディレクトリ or ccTLD or サブドメインを決定済みか |
| hreflang | 双方向・自己参照・絶対URL・x-defaultが設定されているか |
| キーワード | 翻訳ではなく現地語でリサーチされているか |
| 計測 | GSCで「国際ターゲティング」レポートを確認する体制があるか |
多言語SEOは一度設計して終わりではなく、各言語のSearch Consoleデータを見ながら継続的に改善するプロセスだ。最初の設計を正しく行えば、あとは数値に基づいてPDCAを回すだけになる。
グローバル市場への展開を検討している、または「翻訳したのに流入が増えない」という状況にある方は、まずURL構造の現状確認から始めることをお勧めする。
現状の多言語SEO設計を一緒に診断したい方は、お気軽にご相談ください。